不妊治療を決断するまで
たぶん、私は大丈夫
子宮内膜症や子宮筋腫の手術をする不妊治療中の患者さん、不妊治療経験のある妊婦さん・・・、たくさんの患者さん、妊産褥婦さんと関わらせていただきました。
不妊治療中の女性の心理を学ぶべく、文献を読んだり講義を聞きに行ったりしたこともあります。
でも、自分自身が不妊治療をする可能性は多少想像したことがあったものの、おそらく自分の人生では経験することがないだろうなと予測していたのです。
今となれば、何を根拠にそんなことと唖然としますが、月経周期は正常、婦人科疾患の自覚症状はない、基礎体温は二相性、という点から、たぶん望めば妊娠はできるはずと安心していました。
自由を手放したくない
結婚したのは32歳。
当初は夫と話し合い、1年間は二人だけで生活して、それから子どもをつくっても35歳には間に合うねーなんて甘い計画を立てていました。
高齢出産のリスクや卵子の加齢を考えるとのんびりしていられないのは重々承知でしたが、妊娠しづらい因子(子宮内膜症)があるなんて考えもしませんでした。
一方で、私自身がどうしても子どもがほしいという気持ちになれなかったことが、妊娠を先送りにする原因の一つになったと思います。
その気持ちの底には、子ども第一優先の生き方にシフトすることへの抵抗感がありました。
自分を中心に置いた上で、自由な選択ができる状況を手放したくなかったのです・・・。
妊娠・出産にタイムリミットがなかったらいいのにと思いながら、あれもしたい、これもしたい、と「したいことリスト」を作っていました。
進学の夢と挫折
できれば妊娠前に達成したい目標のひとつに、大学院への進学がありました。
結婚に伴う転居を機に専業主婦になった私は、今がチャンスとばかりに進学準備を始めました。
学業と妊娠・出産を両立させるつもりでした。
とにかく、少しでも身軽なうちに進学し、出産の際には休学しながらなんとか勉強をしようと思っていました。
ところが、一生懸命準備を重ねてきたにも関わらず、入試直前に子宮内膜症が発覚し、手術が決定。
「不妊かもしれない」という事実を突き付けられ、学業と妊娠・出産の両立という計画はもろくも崩れ去りました。
それでも受験しましたが、手術後2日目に不合格通知が届きました。
Ⅳ期の子宮内膜症と覚悟
手術の結果、子宮内膜症のステージはⅣ期といういちばん重症の段階でした。
直腸と子宮の癒着がかなりひどかったものの、きれいに剥がしていただけました。
術前には右の卵管も摘出する可能性があると説明を受け、真っ青になりましたが、幸い状態が良かったようで温存できました。
両方共卵管は通過していたので、自然妊娠が可能ということもわかり、ものすごくホッとしたのも覚えています。
医師からは、私の場合は再発率の高さが予測されることから、術後6か月以内で自然妊娠しなければ、体外受精にステップアップするようにアドバイスを受けました。
ここで、やっと私は事態の深刻さを理解し、迷っていた背中を押され、不妊治療に取り組む覚悟を決めました。