助産師が不妊治療を経験してわかったこと

子宮内膜症のため手術→不妊治療開始→体外受精で妊娠・出産した助産師の記録

体外受精を決断するまで

体外受精はしないという選択

 子宮内膜症が発覚する前、夫と「もし不妊だったらどうするか」という話をしていました。

 すんなりと意見の一致をみたのは、「体外受精はしない」ということ。

 夫婦両方の検査をした上で、原因が明確でない不妊の場合は、タイミング療法→人工授精→体外受精→顕微授精へと治療がステップアップしていきます。

 私たちは、どちらかに問題があり体外受精でなければ妊娠が望めない場合でも、原因が不明で人工授精までで妊娠できない場合でも、そこで不妊治療を終了し、二人の人生を歩もうと話し合っていました。

 体外受精を含む高度不妊治療に否定的な感情があるわけではありません。

 ただ、体外受精をしたからといって必ず妊娠できるわけではないし、不妊治療がどんなに心身共に消耗するか、経済的負担も大きいかということは、仕事を通じてよくわかっていました。 

 それに、何が何でも子どもを望むという気持ちもありませんでした。

 子どもがいないならいないなりに、二人で楽しく生きていきたいと思ったのです。

 この考えは、私が子宮内膜症の手術をした後も変わりませんでした。

 

不妊治療の病院選び

 手術時の担当医の勧めもあり、私の子宮内膜症はⅣ期といういちばん重症のレベルだったため、猶予はないということで、術後は通院して不妊治療を始めることになりました。

 その病院選びですが、本来は手術した病院に通いたかったものの、遠方だったため叶わず、新たに病院を探すことになりました。

 その時、手術時の担当医には「とにかく術後6か月以内に自然妊娠しなければどんどんステップアップして、体外受精した方がいい。だから、体外受精ができる病院に初めから通った方がいいかも」と勧められました。

 でも、その時にはどうしても体外受精へのステップアップが想像できず、夫とも話し合って、知り合いの産婦人科医師がいる、一般不妊治療までができる病院に通うことに決めました。

 

一般不妊治療では妊娠できなかった

 不妊治療を始めたのは2014年5月。

 そこから2015年1月まで、タイミング療法を6クール、人工授精を3クールしても、全くかすりもしませんでした。

 治療開始の段階で夫の検査もしましたが、異常なし。

 私の子宮内膜症不妊原因であることは明らかになりました。

 8月には早くも右卵巣チョコレート嚢胞の再発が発覚。

 焦る気持ちとは裏腹に、全然妊娠しない周期を繰り返しました。

 卵管閉塞を疑い、11月に子宮卵管造影もしましたが、両卵管共に異常なし。

 なんで、こんなに妊娠できないの?

 これ以上、人工授精を繰り返しても妊娠しないんじゃないか。

 最初は余裕があった私の心も、12月にはぽっきりと折れました。

 人工授精までしてダメだったら、子どもは諦めようと思っていたはずでした。

 人工授精を繰り返してもダメなことがわかったら、「ここまで頑張ってもダメだったんだから」と、すっぱり気持ちを切り替えられるはずでした。

 でも、到底そんな気持ちになれなかったのです。

 一生懸命取り組んできたはずの治療なのに、まるで達成感がない。

 このまま子宮内膜症が悪化することへの不安と、妊娠できない自分の劣等感、妊娠しない苦しみがいつまで続くのかわからないという不安。

 この苦しみから逃れたい気持ちと、人工授精で諦めてよいものかという葛藤。

 体外受精を試せば、もしかしたら子供ができるんじゃないか。

 あれだけ嫌だったのに、妊娠できない自分にとらわれていることに気づき、愕然としました。

 治療開始当初には予想しなかった色んな気持ちが押し寄せてきて整理がつかず、涙する毎日でした。

 そんな時、3回目のAIH後、不妊治療の担当医が体外受精を勧めました。

 

 

体外受精にトライしてみよう

 不妊治療の担当医に体外受精を勧められた日、私は夫にその旨を伝えました。

 体外受精はしないとあれだけ言っていた夫だったので反対するかと思いきや、意外にも「やってみよう」とあっさり。

 わけを尋ねると、ここで諦めたら後で後悔する気がする、と。

 かといって、エンドレスに治療を繰り返すのは、子宮内膜症のこともあるし、精神的にしんどいだろうから、回数を決めてやってみよう、とのことでした。

 それでもダメだったら、今度こそ諦められるんじゃないかと。

 担当医の勧めもあり、なんとなく体外受精への挑戦の方に傾いていた私の気持ちは、夫のひとことではっきりと固まりました。