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助産師が不妊治療を経験してわかったこと

子宮内膜症のため手術→不妊治療開始→体外受精で妊娠・出産した助産師の記録

インターネットでの母乳の売買から思うこと

 

 今日はブログのテーマとは異なる内容なのですが、助産師として看過できない問題なので記事を書きます。

 

 

 先日、インターネット上で母乳を売買している実態があるとの報道がありました。

 

 見知らぬ第三者の母乳を乳幼児に摂取させることは、大変危険です。

 なぜなら、母乳提供者の既往歴や搾乳方法、保管方法などの衛生管理面が不明であり、病原体や医薬品の化学物質等が母乳中に存在している場合、乳幼児の健康を損なう可能性があるからです。

www.mhlw.go.jp

 

 

 この報道を通して、助産師としての反省も含め、色々と考えることがありました。

 こういったインターネット上での母乳売買の背景には、母親を過剰に母乳育児へ追い込む環境が影響していると思います。

 一部の報道によると、インターネットで母乳を購入した母親は今年の2月に出産し、母乳で育てるのが当然と思い込んでいたが、努力しても思うように母乳が出ず、母親失格だと感じるほどに追い詰められていたとのこと。

 この母親の心情を思うと、本当に心が痛みます。

 

 出産という大仕事を終え、ほっとする暇もなく産後の母親が直面するのは、母乳育児に関する問題です。

 現代はWHOやunicefが母乳育児を推進していることもあり、日本でも多くの病院で母乳育児が推進されています。

 医療従事者(特に助産師)を含め母乳推進派は「頑張ればほとんどの人が完全母乳で育てられます!」「頻回に吸わせれば出ます!」という信念で、母乳を勧めます。

 しかし、母乳分泌は個人差が大きく、母乳が出ない人も10%の割合で存在します。

 出産すれば母乳はスムーズに出るものだと思っている方も多いのですが、母乳分泌が軌道に乗り始めるまでには時間がかかりますし、子どもがうまく乳首に吸い付けなかったりして、「母乳がこんなに大変なものだとは思わなかった・・・」と肩を落とす場合も多く見られます。

 「私が悪いんじゃないか」「努力が足りないんじゃないか」と自責の念に駆られ、赤ちゃんに「ごめんね」と謝る母親を私はたくさん見てきました。

 今思えば、母乳推進一辺倒になりがちなケアを見直し、母乳が出て当然ではないこと、出ない時はどうしたらいいかについて、もっと重きを置いて伝えられたらよかったと反省しています。

 こういった状況の中で、家族や友人等の周囲から(時には通りすがりの人にまで!)「母乳で育てているの?」とか「母乳の出はどうなの?」と気軽に聞かれ、まるで母乳育児をしないと良い母親ではないかのように思われる、思わされる。

 赤ちゃんが泣けば、「おっぱいが足りていないんじゃない?」と不安をあおられる。

 なんとか頑張って母乳育児を続けていれば、今度は「まだあげているの?」とか「虫歯になるよ」とウソ情報を含めた横やりが入る。

 言う方はたぶん、悪気がないのだと思います。

 でも、試行錯誤で育児をしている母親は不安になります。

 「良い母親」=「母乳育児を頑張る」ということを刷り込まれ、それを達成できないかもしれないと感じた母親の絶望感は察するに余りあります。

 母乳育児で追い詰められ、肉体的にも精神的にもぼろぼろになって、それで育児ノイローゼになるのは本末転倒です。

 母乳だろうがミルクだろうが、母親が肩に力を入れすぎずに気楽に育児できる環境、これに尽きると思います。

 またいつか臨床現場に復帰した時には、母親が少しでも笑顔を増やして育児ができるようにお手伝いさせていただけたら、と思います。

 

 

 妊娠・出産・育児の話は本当にデリケートなものです。

 女性なら誰でも経験できるという出来事ではないし、一人の経験が他の人にもぴたっと当てはまるわけではありません。

 それなのに、気軽に「子どもはまだ?」「自然分娩?」「母乳で育てているの?」と聞き、自身の経験のみで「子どもを産んで一人前だから」「陣痛を味わってこそ母親よ」「母乳をあげるのがいちばんの愛情よ」と語る人のなんと多いことか!

 こういったことを私自身言われたり、周囲から聞いたりするたびに、やりきれない気持ちになります。

 でも、スルーするスキルを身につけることも大事かもしれませんね。