助産師が不妊治療を経験してわかったこと

子宮内膜症のため手術→不妊治療開始→体外受精で妊娠・出産した助産師の記録

母乳のみの育児へのこだわり

 今日は娘の栄養方法について書きます。

 現在9ヶ月の娘は離乳食後期にさしかかっており、栄養方法について書くのは今さら感がありますが・・・。

 これまでの、栄養方法に対する葛藤、悩み等、一応残しておこうと思います。

 

母乳のみで育てることへの葛藤

 私は最初から娘を混合栄養で育てています。

 出産前は、うまくいけば母乳で育てたいけれど、そうでなければ無理しないで混合で育てよう、栄養方法にこだわって娘の栄養状態が悪くなったり自分が追い詰められたりするのは避けよう、と思っていた私。

 出産直後もあまり考えは変わりませんでした。なぜなら、37週ちょうどで出産した娘は小さめだったので、口を大きく開けられなかったり飲みが緩慢だったりするだろうなと全然期待していなかったのです。

 しかし、初めて授乳した時、小さめに生まれながらも意外と上手に飲む娘を見て、「うわー!一生懸命飲んでてかわいいー!!しかも、こんなに上手に飲んでくれるならなんとか母乳で育てたい!!!」と、母乳育児への意欲がむくむくと湧いてきてしまいました。

 ところが、大出血してかなりの貧血だった私の母乳分泌状態は良くなく、やっと退院間近に乳房緊満感が出てきて、直接授乳して10g飲めるかどうかというレベル。その間、娘の体重減少も最高で8%減となり、私も貧血でフラフラだったので、ミルクを足さざるを得ませんでした。

 まあこんなもんだよね、退院してからゆっくり頑張ればいいやと思い、退院後は娘の体重を見ながらミルクの量を最低限に調節しつつ、ゆるゆると母乳をあげていました。

 だんだんと母乳分泌量は伸びてきたのですが、母乳だけで頑張るにはちょっと不足している状態。

 もっとも、頻回に1日に20回とかあげればなんとかなったのかもしれませんが、体調が万全ではなく、睡眠不足も加わってフラフラだったので、自分の身体を立て直すことも大事だと思い、そこまではしませんでした。

 でも、母乳一本で育てることへの希望は消えず、じっくり時間をかけて何とかしようと思っていました。

 そんな中、手伝いに来ていた母親の「出ないの?」「足りないの?」という言葉がだんだん負担になってきました。心配して言ってくれているのですがね。

 さらに、親戚や知人からの「混合なの?頑張れば母乳だけでいけるかもよ」「母乳出てる?」という悪気のない言葉が産後の不安定な心にグサグサ刺さり、『母乳だけで育てられない私はなんてダメなんだろう・・・。助産師なのに・・・』とぽっきり折れてしまいました。

 今振り返れば、全然ダメじゃないのに、恐るべし産後の情緒不安定!

 母乳分泌状態も母乳だけでやっていくにはやはり足りない状況には変わりなく、「母乳だけで育てたいけどできない」という悶々とした気持ちが産後3~4ヶ月くらいまで続きました。

 また、その母乳分泌状態を維持もしくは少しでもアップさせるために、搾乳もしたり、ずっと授乳のことばかり考えて振り回されていた気がします。

 で、悶々としている中、デパートの店員さんから通りすがりの知らない人にまで、あいさつ代わりのように「母乳(で育てているの)?」と聞かれ、知らない人になんでそんなプライベートなことをと思いつつ「はぁ・・・」とか濁していると、「やっぱり母乳がいちばんよね!」ととどめを刺されてさらに撃沈とか。

 助産師仲間も当然のように私が母乳のみで育てているということを前提にして話をしてきて、「・・・助産師なんだけど、混合で育ててるんだ」と返した時の気まずさと言ったらありませんでした。

 そんな状態だったので、時には夫に「母乳で育てられない私は母親失格だ」と泣いて訴えたこともあります。

 今、周りに同じことを言う人がいたら、その気持ちを受け止めつつ「母親失格なんかじゃないよ」と断言できるのに、あの時の私は相当やられていました・・・。

 

 

私なりの母乳育児をすることで納得

 そうこうしている内に、母乳だけで育てたい気持ちはすくすく大きくなる娘を見ている内に、徐々に収まってきました。

 母乳の栄養価はミルクより優れていますが、混合でも娘はちゃんと大きくなり、健康です。それに、悩みながらも細々とでもここまで母乳をあげられていることに今は満足しています。

 それから、落ち込む私に助産師の先輩が「あなたは身体が細いし、貧血だってひどかったんだから、これ以上赤ちゃんに吸い取られたら、体力的にもっとしんどかったと思うよ。残念な気持ちもわかるけど、あなたにはこれが合っていたと思うわ」と慰めでかけてくれた言葉も響きました。

 母乳にこだわりすぎていた私。

 本当に、今考えるとなぜあんなにこだわっていたのか不思議なくらいです。

 でも、初めての授乳があんなに出産前の希望を変えてしまうくらいの力を持つとは想像以上でした。

 私のようにいざ授乳すると考えが変わる方、たぶん結構いらっしゃると思います。

 助産師に復帰した時には、こんな自分の経験も踏まえつつ、産後の女性が希望する栄養方法で育てられるよう、退院後も長きにわたって支援していきたいと思います。

 

※母乳のみを与える育児のことを完全母乳(完母)と表現することがありますが、個人的には定義があやふやだと思うので、文中では使用していません。