助産師が不妊治療を経験してわかったこと

子宮内膜症のため手術→不妊治療開始→体外受精で妊娠・出産した助産師の記録

自然流産を選ぶ

 

 本日の記事は自然流産の経過を記載しています。

 苦手な方はお読みにならないようお願い致します。

 

 

 

 

自然流産か手術か

 流産の疑いが強まった時、私は手術を想定していました。

 仕事の調整をつけなければと、おおよその手術日程を問う私に、担当医は自然流産を待つことを提案。

 自然流産は腹痛や出血を伴い、なおかついつ起こるかわからないものです。

 出産ならともかく、流産で痛みを感じるのが辛く思えて、ちょっと抵抗しました。

 また、4月下旬に法要のため泊りがけで出かける予定があり、その時に自然流産が起こるのが不安でした。

 しかし、自然流産と手術のメリット・デメリットをふまえて担当医と話し合い、今後の妊娠を考えると、自然流産を待つ方に気持ちが傾き始めました。

 いちばんの懸案事項は法要で出かけた際に自然流産が起こることでしたが、所見上、担当医の予測では自然流産はまだ先になりそうということだったので、安心して自然流産を選択しました。

 

自然流産待ちの間のこと

 ところが、稽留流産が確定した受診日から2日後の夕方、それまでよりも多めでかつ鮮血の出血がありました。

 予想とは裏腹に、流産の時期が近付いていることを察知しました。

 出血量が増えた翌日からは、夜になると数分間隔で月経痛より弱い程度の下腹痛が出現。

 くるかな、くるかな・・・とドキドキしているうちに、気づいたら眠っている(下腹痛は消失)というのを3日間繰り返しました。

 週末には法要を控えていたので、日程が近づく毎にヒヤヒヤ。

 夫と話し合って、いっそのこと法要をキャンセルしようかと思いましたが、妊娠はもちろん流産のことも身内には一切話しておらず、キャンセルするだけの理由が思いつきませんでした。

 ギリギリまで悩んだ末、流産が起きても対処できるように準備を万全に整えて、法要へ出発しました。

 

自然流産へ

 自然流産が起きたのは、出発したその日の夜でした。

 夕食を済ませた後から数分間隔で下腹痛が起こり始めました。

 出血が少し増えていて、昨日よりちょっと痛いなとは思いましたが、ちょうど買い物中だったこともあり、あまり痛みに気を取られずに過ごしていました。 

 宿泊先の部屋に戻った後も、痛いけれど普通に話せるし、動けるし、まだまだと感じられるレベル。

 こんなものではない、もっと痛くなるはず、と思っていました。

 仕事で関わった進行流産の患者さんはかなり痛みが強そうだった記憶がありましたし、自然流産経験者の友人からも痛みの辛さは覚悟しておいた方がよい、と聞いていたので、今の私はそこまでの辛さではないなと感じたのです。

 今思えば、かなり重症の子宮内膜症でありながら月経痛が軽かった私は、痛み感覚が鈍いのかもしれません。

 あとで夫に聞くと、フーフー言いながら下腹部をさすっている私を見て、これは結構痛いのではと心配していたそうですが・・・。

 下腹痛が起こってから3時間近く経ち、「眠れるうちに眠るね」と早めにベッドに入ろうとした時です。

 突然、出血とは違う、ずるっと何かが出る感じがありました。

 慌ててトイレに入り確認すると、ナプキンの上に胎嚢と思われる子宮内容物が。

 と同時に、下腹痛もすーっと軽くなりました。

 

流産時の夫の反応

 トイレの前で心配している夫に「・・・〇〇ちゃん(お腹の子に仮で名前をつけていました)、出てきたよ」とドア越しに伝え、胎嚢を一人でなんとかしなければと思っていた時、夫が「あの・・・良ければ俺、〇〇ちゃんに会いたいんだけど」と伝えてきました。

 「えっ!」

 まさかの申し出に私は驚き、動揺しました。

 二人の子どもとはいえ、夫が積極的に胎嚢を見ることを申し出るとは思いもよらず、何よりも血液が苦手な夫に生々しい胎嚢を見せるのはためらわれました。

 ショックを受けるのでは、はたまた倒れるのではと心配になり、心の準備をしてもらうべく、状況を伝えました。

 血液が付着していること、生々しいこと・・・、それでも会いたいのか尋ねると、「会いたい」とのこと。

 全く予測しなかった夫の言葉でしたが、自分の子どもとして大事に思う気持ちが感じられ、嬉しかったです。

 胎嚢はできるだけきれいに洗って、きれいなナプキンの上にのせて、夫に見せました。

 夫は泣いていました。

 胎嚢は思ったより大きくて、しっかりした形に感じたようです。

 「ちゃんと形になっていたんだね・・・。来てくれてありがとう」

 そんな夫の姿を見ていると、私も涙が止まらなくなりました。

 親にしてくれて、幸せな気持ちをくれた子どもに二人で感謝しました。

 いちばん懸念していた出先での流産になってしまいましたが、お腹から我が子が出ていく感覚を感じ、二人でその姿を見届けたことは、私たちにとって流産を受け止めるために必要なプロセスでした。

 抵抗を感じていた自然流産でしたが、今となってはこれでよかったのだと思えます。