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助産師が不妊治療を経験してわかったこと

子宮内膜症のため手術→不妊治療開始→体外受精で妊娠・出産した助産師の記録

元同僚(助産師)からの言葉にモヤモヤ

心の整理がつかなかったこと

   不妊治療をしている女性は、周囲からのひとことに傷つくことがあります。

 これに関しては、助産師として勤務していた頃、私は実際の患者さんの言葉や不妊ケアの学習を通して学ぶ機会がありました。

 その学びを通して、不妊治療中の女性に対して配慮すべき言葉を知ると共に、傷つく言葉を投げかける人は不妊治療への理解が不足しており、その人にとっては挨拶と同じくらいのレベルの、何気ない、悪気のない一言なんだろうと感じていました。

 それゆえ、自分が不妊治療を始めた時には、周囲の「子どもはまだ?」「早くお父さんやお母さんに孫の顔を見せてあげなくちゃ」というお決まりの言葉から始まり、「助産師なのに、子どもの作り方も知らないのか」という結構ひどい言葉も、わりと寛容に受け止めていました。

 時々はカチンとくることがありましたが、私の中では「この人たちは不妊の苦しみを知らないし、知ろうともしていないから仕方ない」という気持ちの方が大きかったです。いちいちまともに取り合っていたら疲れるので、とにかくその場をやり過ごすことにしていました。

  しかし、先日、元同僚とのやりとりを通して、自分の中でどうしても整理がつかないと気づいたのが、助産師である彼女たちからの言葉でした。

 

妊娠の有無を問うメール

 私が不妊治療をしていることを知らない元同僚の一人は、ここ数年の年賀状に必ず「妊娠の報告はまだですか?」「子孫繁栄を願っています!」といったメッセージを書き添えてきます。

 最初の頃は、まだ笑って受け流すことができました。

 ただ、先日、彼女から久しぶりにメールがあり、やりとりの中で「妊娠の報告がこちらに来ていないけど、まだ?」とメールが送られてきた時には、どっかーんと爆発しそうになりました。

 何となくモヤモヤした気持ちを抱えながらも、これまで彼女からのメッセージを好意的に解釈しようとしていましたが、もう限界でした。

 助産師として不妊に関する一般的な知識は持ち合わせているはずなのに、何年も妊娠・出産に至っていないこちらの状況を推し量ろうともせず、何度も何度も同じメッセージを送ってくるなんて。

 これを止めるには、はっきりと彼女に不妊治療をしていると言えばいいのでしょうが、そこまで親しいわけではなく、言う必要はないと思いました。

 でも、もう、この手のメッセージはやめてほしい。

 そう思って、「私は子どものいない人生を歩むかも~」と返事を送りました。

 ようやく何かを感じ取ったのか、彼女からの反応はなく、そこでメールのやりとりは終わりました。

 

的はずれなアドバイス

  また、先日、別の元同僚が、近くに引っ越してきたと連絡をくれました。

 近々会おうということになったものの、互いの予定が合わず、日程が決められませんでした。

 彼女からは〇日に会うと決めて、その日は絶対予定を入れないようにしようと提案がありました。

 でも、来月以降移植周期に入る私は、受診がいつになるか現時点ではわからず、その提案を受け入れることができません。

 やむを得ず、体外受精を始めたところなので、先々の予定が立てられないことを告げました。

 その結果、彼女から状況について理解を示す内容と、「うまくいくように祈っているね」というメッセージが届き、思い切って話してよかったとホッと安堵しました。

 しかしその数日後、彼女から改めてメールが届きました。

 その内容は、家を建てると子宝に恵まれるというジンクスがあり、彼女の周囲では4人が新築の家を建設中、建築後に妊娠したので、参考にしてねというもので、私は唖然としました。

 たぶん、彼女は、私が少しでも救われるようにと、良かれと思ってメールしてくれたと思うのです。

 けれど、これは家を建ててみたらということなのか、どう解釈したらよいのかと悶々としました。(ちなみに我が家は分譲マンションですが、彼女は我が家の住宅事情について何も知りません)

 そして、いくらプライベートでの関わりとはいえ、国家資格をもつ助産師でありながら、何の科学的根拠もない内容を他者にアドバイスするのはどうなんだろう、と。

 このアドバイスを送ってきたのが素人なら、私はまだ受け流せただろうなと思います。

 しばらく悩んだ結果、どう反応したらよいのかわからず、彼女には返事をしませんでした。

 

助産師自身が不妊治療について理解できていないのかも

  不妊治療については一般的にはまだまだ理解が得られていませんが、助産師は不妊治療の現場が身近なこともあり、患者さんの苦しみを目の当たりにすることが多いと思います。

 だから私は、元同僚も、子どもの有無に関する話題は配慮が必要なデリケートな話題であることくらい知っていると思っていましたし、ある程度の正しい専門的知識も持ち合わせていると思っていました。

 でも、実際はまだ理解が不足している助産師もいることがわかりました。(もちろん、こちらの気持ちに配慮しつつ言葉をかけてくれる助産師もたくさんいますが)

 ただ、不妊治療患者が増えている今、助産師が女性を追い詰める存在であってはならないですし、国家資格を所有している以上、科学的根拠に基づいた知識を持つ必要があります。助産師が科学的根拠がないものを広めてはならないのです。

 自分の経験が絶対で全てだとは思っていませんが、今回の経験を通して自分が感じたことを忘れずに、人として、助産師としてどうあるべきかを日々進化する医療情勢にアンテナを張り巡らせながら、常に考えていきたいと思います。